いじめが原因の不登校の深刻さ
いじめは、不登校の原因の中でも深刻なもののひとつです。不登校の原因の70〜80%がいじめというデータもあります。(ただ、私の感触では、近年、割合としてはもっと減っていると思います。)
子どもさんは、暴力、言葉の暴力、いたずら、無視、仲間はずれ、等、さまざまないじめにより、深刻な心の傷を負うことになります。
ここで、親御さんにわかっていただきたいことは、「子どもさんにとって、クラス・学校が、彼・彼女の『全世界』だ」「子どもさんにとって、学年の終わり・卒業までの時間は、『永遠』だ」そして「子どもさんにとって、友だちからの否定は、自分の『全否定』だ」ということです。
大人にとっては、「クラス・学校がすべてじゃない」「この学年が終われば」と思えることも、子どもさんにとっては、クラス・学校が「全世界」であり、学年の終わりまでは「永遠」なのです。「決して逃れることはできない!……」と子どもさんは考えます。
そして、まだ「自我」が確立されていない思春期もしくは思春期以前の子どもは、まだ「自分がこの世界にちゃんと存在している」という感覚をつかみきっていません。ですから、友だちから「どこかに行ってしまえ」と言われたり無視されたりすることは、自分が「全否定」されることです。
子どもさんは、自分が全否定され、終わることもなく出ることもできない闇の中にいるわけです。大人の目線だけで見るのではなく、子どもさんがそのような状態にいることを理解してあげてください。
いじめがあったかを確かめておきましょう
いじめがあったのかなかったのかわかりにくい場合は、まず、いじめがあったのかなかったのか、あったとしたらどのようないじめだったのか、等をしっかりと把握おく必要があります。深刻な心の傷を負っていて、傷が癒えていない場合、安易に「学校に行きなさい」等と言うことは、さらに問題を深刻にしてしまいます。いじめがあった場合となかった場合では、対処法も大きくかわってきます。
学校の先生や子どもさんの友だちと密に連絡をとって、いじめがあったのかないのか、あったとしたらどのようないじめだったのか、を知るようにしてください。(「対処法」で述べますが、この際、「いじめを放置した先生」「いじめをした友だち」「いじめを見て見ぬふりをした友だち」を責めることは基本的に避けてください。)
2つのいじめ
不登校の観点から見ると、いじめにも、2種類あります。ひとつは、「外因的な原因が大きいいじめ」、もうひとつは、「内因的な原因が関係しているいじめ」です。
難しい言葉を使ってしまいましたが、……「外因的な原因が大きいいじめ」というのは、「転校してきて、方言がバカにされて、いじめられた」「体育の時間に大失敗をして、それをからかわれていじめられた」というようなケースです。(いじめに、単純も複雑もありませんが、言ってしまえば、「単純ないじめ」です。)
このような子どもさんは、それまではまったくいじめになどあったことがない、という子どもさんで、転校・方言や大失敗がなければ、いじめにあうこともなかったはずです。
それに対して、「内因的な原因が関係しているいじめ」というのは、不登校になりやすい子どもさんは、もともといじめにあいやすい性格である場合が多い、という複雑なケースです。(これは、「いじめられる子にも問題がある」という意味ではありませんので、誤解しないでください。いじめは、当然、「する側」に非があります。ただ、冷静に問題を直視するために、知っておく必要があります。)
もともと、生真面目・正義感が強い・向上心が強い・責任感が強い(悪く言えば、融通が利かない・流すことができない・人づきあいが苦手)、という性格の子どもさんが、不登校になりやすい、という傾向があります。このため、例えば、クラスで規則を破る子がいたとき、そのような性格の子どもさんは、ついつい、真正面から注意をしてしまうのです。そして、言い返されたら、とことんまで、(実際に自分が正しいわけですから)自分の意見を曲げません。
他の子どもさんですと、注意するにしても、やわらかい表現をしたり、(よくないことですが)見逃したりするのですが、真正面から注意してしまうのです。
これが、いじめへと発展してしまいます。
全身で受け止めるつらさ
もちろん、いじめにあった子どもさんは、「外因的な原因が大きいいじめ」の場合でも、「内因的な原因が関係しているいじめ」の場合でも、大きな心の傷を負います。先ほど述べた「自分が全否定され、終わることもなく出ることもできない闇の中」にいます。
ただ、事態が複雑なのは、「内因的な原因が関係しているいじめ」のケースです。いじめにあった場合、もともと生真面目な子どもさんですから、いじめのショックをも、通常以上に受けてしまいます。「おまえなんか、どこか行ってしまえ」という言葉を、全身で言葉どおり受け止めてしまうのです。「からかいの表現」としてではなく、文字どおり「自分は不要」と受け止めてしまうのです。
いえ、子どもというのは、大人ほど上手く「受け流せる」わけではありませんから、「外因的な原因が大きいいじめ」にあった子どもさんも、大人が考える以上に、いじめを受け流せず全身で受け止めてしまっているとも言えます。
いじめによる不登校を考える場合、子どもさんは「自分が全否定され、終わることもなく出ることもできない闇の中にいる」ということ、そして、「いじめを受け流せず全身で受け止めている」ということの2点をしっかりおさえておいた方がいいでしょう。